■香料は、大きく分けて
次の三つに分類できます。
A.石油などの原料から特定の成分を抽出し人工的に作った香料
B.植物などの原料から特定の成分を抽出し、人工的に作った香料
C.動植物などそのものから抽出(水蒸気蒸留や果皮圧搾)した香料
A,B は、人工(合成)香料と呼ばれ、Cは天然香料と呼ばれます。
安いルームフレグランスでは、
比較的人工香料が多く使われる傾向があり、
高価なフレグランスでは、
天然香料が使われる傾向があります。
そのため、業界でいう
「自然派ルームフレグランス」、
という表現は、
天然由来の原料を主成分とするが、
合成香料も含んでいるため、
自然に近いという意味を含んで、
自然「派」というように表現されています。
余談ですが、
ルームフレグランスの主成分になりやすい
アルコールにも天然ガスや石油由来のものと
植物由来のものがあります。
アルコールとは、
炭化水素の水素原子をーOH(ヒドロキシ基)
で置き換えた物質の総称のことで、
その中の1つに、
エタノール(C2H6O)というものがあり、
そのエタノールにおいても、
天然ガスや石油を原料とした合成エタノールと
植物を原料としたバイオエタノールと
呼ばれるものがあります。
ちなみに、無水エタノールとは、
エタノールの中の水分量がほとんどなく、
純度99.5%以上のものを指します。
この表記では、合成エタノールか、
バイオエタノールかの判断がつきません。
ただし、香りの影響については、
物理的、化学的な性質は、全く同じなため、
合成エタノールとバイオエタノールの違いは、
ありません。
環境負荷の観点からは、
バイオエタノールが望ましいです。
■天然香料と人工香料はどちらが望ましいか
百貨店で香りを販売していると、
「アロマエッセンス(精油)だと頭が痛くなる」という
天然精油の香りが合わない人もいれば、
「私はアロマエッセンスしか使いません」という、
天然精油しか使わない人、
化粧品コーナーなどの香りが苦手な人、
香りに過敏な人だけど、
特定の香りなら大丈夫な人、
など、様々です。
◇安全性の観点から
人工=危険、天然=安全で良いもの、
というイメージが多くあるように思われます。
しかし、化粧品や食品などの
人工香料が使用される場合は、
国際化粧品香料業界などの
世界的な安全基準をクリアした
品質のものだけが市場に出回り、
その使用量も決まっています。
それに対して、精油は、
日本では雑貨という分類のため、
品質がマチマチであったり、
量や使用法を自分で判断しないと、
効能をもたらす時もあれば、
時に毒物になりかねないこともあります。
つまり、
人工香料は規制が厳しく
適格に管理されているものだけが
市場に出回るのに対して、
天然香料は、規制が緩く、
また用法も自己判断に委ねられている点で、
人工香料の方が安全とされてます。
◇香りとしての観点から
一時、社会問題にもなった言葉、
「香害」。
一部の柔軟剤などが
大きく問題になりました。
人工香料の特徴は、
・香りを安く供給できて、
・持続し、
・自然界に存在しない香りを作れること
※高価な人工香料もあります
大量生産される商品に
人工香料は適しています。
しかし、
様々な香り成分の要素が
混じりあって存在する一つの天然香料と違い、
人工香料は、その主成分に似た成分のみを
他の原料から取り出して、
似せて作っているため、
ほぼ同じ成分とはいえども、
単体で比較したときには、
人工香料は、天然香料に比べ、
香りの柔らかさ、優しさが劣ります。
◇ルームフレグランスの観点から
それでは、天然香料100%のものと
天然香料に人工香料を加えたものを
比較してみると、
100%天然香料の方が
必ずしも良いとは言い切れません。
100%天然香料ルームフレグランスは、
・香りがあまりお部屋にいきわたらない
・香料の種類によっては、現実的ではない費用がかかる
・誰でも作れるようなありきたりな香りになりやすい
というデメリットがあげられます。
また、天然精油の香りが合わない
(特定の香りのみが香っている状況)
という場合もあります。
一方、天然香料に人工香料を加えることで、
上記のデメリットを改善し、
・香りがお部屋にいきわたりやすい
・高価な香料を使っても市場価格で作ることができる
・複雑に香りをブレンディングすることもできる
・特定の香りだけ香らず、バランスの調整されて香る
ということが可能になります。
もちろん天然香料の割合が多い方が
香りが柔らかいことは変わりませんが、
天然香料の弱みを人工香料が補うことで
より香りの世界が広がることが
期待できるのです。
■まとめ
世間に広がるイメージ
天然香料(アロマエッセンス)=安全でいいもの
人工香料=あまりよくない
というものが一概に正しいとは限りません。
それは、一部の安価な商品
(一部の柔軟剤や香水)によって、
人工香料すべてが否定されるものでもなく、
また、フランスなのどの
アロマテラピー先進国のイメージだけで、
天然香料は安全と
判断し得るものでもないからです。
企業が発信するイメージだけを
鵜呑みにするのではなく、
ユーザーが、
正しい知識を身に着けて商品を選び
その適切な用法と容量を守って
生活を豊かにしていくことが
最も大切です。
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